DAM BLOG
神の領域 大谷ダム
2013年5月17日
大谷ダムは熊本県と大分県の県境に程近い阿蘇郡高森町にあるダムです。
ダムの手前には柵が設置してあり、車両は侵入できません。
ここから先は「神の領域」と書いてあります。
「立入禁止」と書いてあるより遥かに威圧感があります。
気圧されながらも徒歩で先へと進みます。
長い急勾配の坂道をひたすら歩きます。
ようやくダム湖が見えました。
赤くて丸い取水塔があります。
ダムの左岸に近い部分は堆砂でほとんど埋まっているようです。
長年の堆砂により貯水量が半分程度まで落ちているそうです。
天端全体が余水吐の自然越流式のダムです。
つるんとした形状なのですが、堤高は26メートルあるので、なんだか異様な雰囲気に見えます。
異様な雰囲気に拍車をかけているのが、堤体表面の苔によって描き出されている縞模様です。
緑色に光っていて、なんだか生き物のように感じます。
左岸側には導流部分があります。
越流した水は、集まり、減勢工へと流れ込みます。
堤体下部中央にはスリットが入っています。
大谷ダムは戦前に建設されたダムです。
コンクリートダムとしては、とても古い方に入ります。
土木学会の「日本の近代土木遺産 現存する重要な土木構造物2000選」に選定されています。
堤体表面は「コンクリートブロック張り」というめずらしい工法です。
よく見るとブロック同士の境目が見えます。
下流側はなんだか入り組んでいます。
このダムは農業用水を貯める為のダムです。
県をまたいだ大分県竹田市の水田や耕作地に水を送っています。
大谷ダムの堆砂による貯水量の減少が影響して、降水量が少ない年になると、竹田市萩町は深刻な水不足に陥ります。
頼みの綱である大蘇ダムが水漏れ修復中なので、この大谷ダムは萩町の農家にとってはまさに「神の領域」なのでしょう。