DAM BLOG
意匠の極み、河内ダム
2014年4月3日
河内ダムは北九州市八幡東区にあります。
ダムによって形成される河内貯水池は公園やサイクリングロードが整備され市民の憩いの場となっています。
貯水池周辺は過去には観光地として栄えたそうですが、現在は穏やかな公園といった趣です。
このダムの特徴はなんといっても表面を覆う石積みです。
河内ダムは戦前にできた古いダムです。
当時はコンクリートが高価だった為、同時期のダムにはコンクリート量が少なくすむ石積みダムが多く建設されました。
表面の石積みは職人により積み上げられます。
石工が造ったダムのことを「メイソンリーダム」と呼ぶそうです。
神戸の千苅ダム、香川の豊稔池ダムなど、大正時代に建設された石積みのダムは外観がとても美しいです。
福岡県には、河内ダムより少し古い曲渕ダムという石積みダムもあります。
石積みダムの中でもこの河内ダムは、装飾をいう点では日本でも随一だと思います。
欄干も石積みです。
欄干上部・中部・下部と上面それぞれに違う大きさの石が使われています。
取水塔も石積み。
石の積み方と大きさの変化で、装飾を形成しています。
凄まじいまでの石工の技術と、設計者のこだわりを感じます。
堤体直下に見える操作室でしょうか、もちろん石積みです。
導流部も・・・
機能としての石の役割を超えて、デザインとしての石積みに対する強い美学を感じます。
設計者は沼田尚徳という人ですが、北九州の産業遺産を巡るとこの人の名前がたくさん出てきます。
沼田氏は八幡製鐵所の土木部長だった人です。
現在も河内ダムは八幡製鐵所(新日鐵住金)所有のダムです。
当時官営だった八幡製鐵所に工業用水を送るため、国策として造られたのがこの河内ダムです。
鉄需要に湧く当時の世相により潤沢な資金を使うことができたので、ここまで凝った意匠を生み出すこともできたのでしょう。
民間所有のダムというと、たいていは立入禁止ばかりでろくに堤体も見えないダムが多いのですが、河内ダムは天端も立ち入れて市民に対してとても開放的な所が何より素晴らしいと思いました。